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大阪家庭裁判所 昭和52年(家)1086号 審判 1978年4月20日

申立人 小林友子

相手方 鈴木清一こと李清一

事件本人 小林正範

主文

本件申立を却下する。

理由

一  本件申立は「事件本人の親権者を申立人と定める。」との審判を求めるにある。

二  よつて調査するに、当庁昭和五二年(家イ)第一二七四号内縁関係解消調停申立事件の一件記録、本件記録中の筆頭者を申立人とする戸籍の謄本、○○法務局長作成にかかる事件本人の認知届記載事項証明書、申立人本人審問の結果を総合すると、申立人は大韓民国の国籍を有する相手方と昭和四七年四月末頃から大阪市○○区や○○市内において同棲するに至り、昭和四八年七月二七日相手方との間に婚姻外の子である事件本人を出産したこと、同年八月七日相手方は大阪市○○区長宛事件本人の認知を届出たこと、同認知届出後六月以内に事件本人は我が国の国籍を離脱していないこと、がそれぞれ認められる。

上記認定のとおり、相手方が我が国の方式により昭和四八年八月七日事件本人の認知を届出たことによつて、事件本人は相手方によつて有効に認知されたものというべきである(法例一八条、八条二項)。そして、父である相手方が認知した事件本人の親権者については、相手方の本国法たる大韓民国法によるべきところ(法例二〇条)、同国国籍法によれば、同国の国籍を取得することにより六月内にその国籍を喪失するにいたる外国人であつて、大韓民国の国民である父が認知した者は同国の国籍を取得し(同国国籍法三条二号)、その者が未成年者であるときには父の家に入籍する限りその親権に服することになるが(同国民法七八二条一項、九〇九条一項)、同国の国籍を取得した後六月を経過してもその外国の国籍を喪失しないときは、大韓民国の国籍を喪失する(同国国籍法一二条七号)ことによつて父の家に属し得ず(同国戸籍法二一条)その者の生母が当然親権者となるもの(同国民法九〇九条三項)と解せられるところ、前記認定の事実関係によれば、事件本人は申立人の婚外子として母である申立人と同じ国籍である我が国の国籍を有するものであり、また相手方に認知された後六月内に我が国の国籍を離脱していないことが明らかであるから、事件本人は当該六月を経過した後は、当然に生母である申立人の親権に服しているものというべきである。

以上のとおり、事件本人の親権者につき準拠すべき大韓民国法によれば、法律上当然に申立人のみが事件本人の親権者であるというべきであるから、事件本人の親権者の指定を求める本件申立は、その前提を欠く不適法のものというべきである。

よつて、本件申立を却下することとして、主文のとおり審判する。

(家事審判官 斎藤光世)

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